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実は最近この試験に出ない日本史・世界史のコーナーが何故か人気のあることに気づきました。ということで、今年はこちらのトピックスを重点的に更新して行こうということにしました。よろしくお願いします。
第12回 「日本文学に見る暗号文(その1)」
自分は大学時代は英文学を専攻していたのですが、卒論のテーマは「シェークスピア作品に見る暗号」でした。シェークスピアは、ちょうど江戸時代に入る頃の人で、この人の作品にはさまざまな造語が出てきてそれがまた暗号ともとれるわけなのですが、この話はまたおいおいするとして、そんな昔に暗号があったと驚いていたら、日本にはもっと昔から暗号があったんですね。
代表的なのが「沓冠(くつかむり)」という手法。
1. 唐衣 着つつなれにし つましあれば はるばるきぬる 旅をしぞ思う 在原
業平
2. 夜もすずし 寝ざめの刈穂 手枕も 真袖も秋に へだてなき風 吉田
兼行
3. 夜も憂し 寝たくわが背子 はては来ず なほざりにだに しばし訪ひませ 頓阿
各句の切れ目の1文字をとって並べると、最初の1が「かきつばた」になります。
そして2、3は依頼と返答の句になっているんですが、頭文字だけではなくって、最後の文字をとって並べるところがミソ。
つまり、2が「よねたまへ(米欲しい)、ぜにもほし(銭も欲しい)」で、3が「よねはなし(米はない)、ぜにすこし(銭少し)」となります。
沓というのは、末尾の意味が、そして冠は頭の意味があるそうです。(講談社現代新書「ことば遊びコレクション」から一部引用)
(興味がある人は、講談社現代新書「ことば遊びコレクション」を読むともっと面白いですよ。)
昔の人は風流だなぁと思っていたら、みなさんが知っているあの歌にも意外な事実がありました。「いろは歌」です。
「いろは歌」は、日本の文字を重ねることなく47文字使って作った歌で大昔からある非常にすぐれた歌ですね。
いろはにほへとちりぬるを わかよたれそつねならむ うゐのおくやまけふこえて あさきゆめみしゑひもせす
(色は匂えど散りぬるを わが世誰ぞ常ならむ 有為の奥山今日越えて 浅き夢見じ酔ひもせず)
となるんですが、この47文字を次のように7文字づつで切ります。
いろはにほへと
ちりぬるをわか
よたれそつねな
らむうゐのおく
やまけふこえて
あさきゆめみし
ゑひもせす
そして各行の最後の文字を並べると「とかなくてしす」、つまり「とが(罪)なくて死す」となります。だれかの無実を訴えたかったのか。
一般的には空海の作とされている「いろは歌」ですが、篠原 央憲 著の「いろは歌の謎」では、柿本人麻呂説が描かれています。
一言で言うと、柿本人麻呂が無実の罪で流刑となり、自分の処遇に絶望して恨みを込めて呼んだ歌だという説です。なかなか面白いので興味のある方は読んでみてください。