坂の上の雲・第三部は、国の存亡を賭けた日露戦争を描いています。
そして高橋英樹演じる児玉源太郎が活躍するのは、陸軍の戦いを描いた第10回「旅順総攻撃」と第11回「二〇三高地」です。
日本艦隊の宿敵、ロシア艦隊は旅順港に閉じこもってしまいました。さらにロシアはバルチック艦隊を極東に派遣し、二つの艦隊で日本艦隊を撃滅しようとしています。
海軍が無力になれば、日本の海はすべてロシアのものになってしまい、大陸にいる日本軍への補給ができなくなるのはもちろん、貿易もできず、さらには本土に上陸されてしまうことになってしまいます。
これを防ぐためには、陸路から旅順を陥落させ、艦隊を撃つしかありません。陸軍は、乃木希典将軍率いる第三軍を旅順攻略に任命しました。
しかし、最新の技術で作られた旅順要塞は、日本軍の攻撃をまるで受け付けない鉄壁の防御で乃木を悩ませます。三度にも及ぶ総攻撃でも進展しない事態に、旧友でもある陸軍参謀・児玉源太郎は乃木を助けるべく、自ら戦地に赴く決意をするのでした。
二〇三高地の攻略では、児玉源太郎が大活躍をします。
乃木が果たせなかった要塞攻撃も、正々堂々と正面攻撃という武士の戦い方をしていたからではないかとも言われています。開国して日の浅い日本では、まだ近代戦への対応が遅れていました。
しかし、百年にひとりの知将と言われる児玉は、二〇三高地奪取に向け、第三軍の構成を一新して挑みます。
部隊配置の大胆な再構成や、28サンチ榴弾砲など、新兵器の積極的な活用など、児玉源太郎は、臨機応変に対応できる柔軟性がある指揮官といえるでしょう。
今回の児玉源太郎の見所は、乃木と再会したときの温かみのある表情から、現場の指揮官たちに檄を飛ばす鬼気迫る児玉への切り替わり!これは必見です。
以前、役者さんが「英樹さんに怒った顔で面と向かって迫ってこられると、冗談抜きの本気で怖いです!」と語ってくれたことがありますが、今回も迫力満点で、現場は怖かったことでしょう。
試写会でも異例の拍手喝采だったそうですよ。
第12回「敵艦見ゆ」では、陸軍最後の決戦となる「奉天会戦」が始まります。
旅順攻略が成功した勢いで、ロシア軍を追う児玉たちですが、国力の乏しい日本は、すでに弾薬が不足してきていました。
療陽を基地として越冬した後に決戦を行う予定でしたが、厳寒の中、ロシア軍の大部隊による奇襲を受けてしまいます。
黒溝台の攻防と呼ばれるこの危機は、秋山好古少将率いる騎兵第一旅団の活躍で凌ぎきり、舞台はいよいよ奉天会戦へと移ります。
兵力・大砲の数共に劣勢だった日本軍ですが、児玉の大胆な作戦が功を奏して、ロシア軍は退却。辛勝することができました。
報告を受けた児玉は、休むことなく大本営に帰り、戦後を見据えた講和に向けて動き出したのです。
そして、戦艦三笠を旗艦とする日本海軍は、いよいよロシアのバルチック艦隊と最後の決戦に挑んでゆきます。
日本の運命を賭けた男たちの戦いを描く今回の第三部、圧倒的な戦闘シーンを始め、名優たちの好演が目白押し!全編が見所です!お見逃しなく!
ちょっと知識
さて、今回のドラマでは、いくつか聞きなれない言葉が出てきます。
これは、ドラマ時代では、近代戦のお手本として、フランスやドイツの理論を取り入れていました。このため欧州の言葉がそのまま使われていることがあったのです。
旅順要塞の外壁に使われていた「ベトン」は、フランス語とドイツ語で「コンクリート」のことです。
ロシア自慢の要塞ですから、コンクリートを作る材料の配合にも日本の知らない工夫があったのかもしれませんね。
また、「28サンチ砲」、この「サンチ」も「センチ」のフランス語(centimétreの略)の発音だそうです。
こういう細かいところもちゃんと再現してドラマにしているのですから、さすがですね。
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