研究 「600万ドルの男」

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Jackの「ネタばれ!エピソード解説」編

【第1回】 「サイボーグ大作戦」(リチャード・アービング監督)
スティーブ・オースチン大佐が、サイボーグに改造されるまでを描く、「600万ドルの男」のいわば導入編とも呼べる記念すべき第1話。007張りのアクションが続くのかと思いきや、いたって静かに時が流れていく。しかも、全編に渡って根底にあるのは、ヒーロー物にあるスマートさではなく、その裏にある孤独感、とりわけ、スティーブの心の葛藤、芯の強さが鮮烈に描かれている気がする。
シリーズ中の上司、ゴールドマンとはまだ出会っていないが、同じ役割の人物としてOSO戦略作戦本部のスペンサーが登場。いかにもうさんくさい、軍人ぽい感じの人物でゴールドマンの性格に通じる部分も若干見受けられる。
スティーブを支える看護婦ジーン役は、「スパイ大作戦」のバーバラ・アンダーソン。スペンサーが「事件記者コルチャック」のダーレン・マクギャビン。ルディ・ウェルズ博士が「サイコ」のマーチン・バルサムと第1話にふさわしくそうそうたるメンバーがゲスト出演。華を添えている。

<ストーリーの流れ>
不慮の事故→人体改造・リハビリ→男子救出→人質救出作戦会議→砂漠の人質救出作戦→大脱出編→ラストシーン

<あらすじ>(ネタバレ注意!)
宇宙飛行士スティーブ・オースチンは、新型テスト機の実験飛行中にテスト機が急に故障し着地に失敗。右手、両足切断、左目を失うという重傷を負う。同じ時期、OSO戦略作戦本部のスペンサーは、サイボーグ計画を持っており、事故にあったスティーブに目をつける。
Dr.ルディはスティーブとは親友であり、サイボーグ計画の発案者であった為、スペンサーはスティーブをサイボーグに改造することを決定。コロラドの研究所にスティーブを運ぶ。スティーブの意志とは関係のないところで話は決まってしまった。人工的に催眠状態にあったスティーブは、コロラドの研究所で目を覚ますが現実を受け入れられず一旦は自殺を図るが未遂に終わる。その後、バイオニックの肉体組織を見て拒否するスティーブだったが、移植手術は成功。スティーブはリハビリに耐え次第にバイオニックの能力に慣れていく。

スペンサーは、リハビリの息抜きに看護婦ジーンとのドライブをすすめ、スティーブはジーンと2人でドライブを楽しむが途中で車が横転する事故を目撃。車内に閉じ込められた少年の救出を計る。実践に慣れていないバイオニックの力で無事に少年を救出したスティーブであったが、バイオニックの腕が壊れ機械部分を少年の母親に見られてしまった。母親の驚愕の表情に自分が普通の人間ではないことを改めて感じたスティーブは、落ち込んでしまいすべての治療を拒否する。

ところが、その後スティーブはスペンサーの巧みな言葉に乗せられ渋々OSOの要人救出指令を受けてしまう。砂漠を走り、要人救出作戦に現地に赴いたスティーブであったが、肝心な要人は数週間前に殺されていた。スティーブはスペンサーにニセの情報をつかまされテストされていたのだった。ゲリラ組織に捕らえられたスティーブだったが、バイオニックパワーを使って脱出に成功。怪我を負いながらも見事に帰還した。Dr.ルディの研究室に運ばれたスティーブは、ジーンに死線を越えて帰還できたのは生きようとする意志が強かったことを告白するのであった。

<バイオニックシーン>
・リハビリ中の重量上げ?シーン。(右腕)
・リハビリ中の走るシーン。(両足)
・男子救出時の車のシートを壊すシーン。(右腕)
・砂漠の救出作戦時の現地まで砂漠を走るシーン(両足)
・捕らわれの身になった時、コンクリートにつながれた鎖を引っ張って壊すシーン(右腕)
・ドアを蹴破るシーン。(両足)
・戦車の蓋をこじ開けて手りゅう弾を入れるシーン。(右腕)
・飛行機まで走るシーン(両足)

<ポイント>
・音楽はテーマソングが確立されていない時でもあり、全体的に静かでゆっくりとした感じ。
「時空警察」で有名なあのテーマソングはシリーズ化した後に「オリバー・ネルソン」が作曲した音楽なのだが、この初回の音楽は「刑事コロンボ」などで有名な「ギル・メレ」が担当している。「MONDO PARADISO」に収録されているテーマ曲はオリバー・ネルソンの主題曲をアレンジしたものなのだが、何故かこの1話目の曲調(ゆっくりとした演奏)に一番合っている気がする。是非、チェックしてみてください。
・実はさりげなく四季の移り変わりが映像に差し込んである。
スティーブが事故後にコロラドの実験施設に運ばれた時は、雪深い冬、手術直前は青葉の茂る春(もしくは夏)の映像が...。事故からサイボーグ手術までの間の時間の流れがさりげなく自然映像で表現されている。
・任務遂行中は上下同じ色の服
服装については、何故か忍者気取りのところがあって、任務中は上下同じ色の服のケースが目立つ。この法則は第3話にも続いている。リンク編で紹介したジャージは青とエンジが早速登場している。
・バイオニックの右手
なかなか描き方に気を使っています。右手は手術後のリハビリでスティーブの思い通りに動く手になったはずなのですが、今一つ使い方を極めていないというかスティーブは扱い方になれていないせいか自信を持っていないようです。未公開シーンのジーンとのピクニックでジーンの手を強く握りしめてしまい左手でとって返したり、初ミッションの説明の時に女性のエージェントが初対面の挨拶を交わす際、右手を差し出し握手を求めたのに対し、右手で握り返さず握手を拒んだりといった細かい描写はなかなか気が利いています。

<情報>
・「サイボーグ(CY’BORG)」の定義
番組冒頭で出てくるコンピュータの画面に次の文字がある。
 "A HUMAN BEING WHOSE ORIGINAL HUMAN PARTS HAVE HAD TO BE REPLACED TO ONE EXTENT OR ANOTHER BY MACHINES THAT PERFORM THE SAME FUNCTIONS."
・スティーブの経歴
 12年間宇宙計画に参加。6人の最優秀宇宙飛行士の1人。
・人質救出作戦のスペンサー
 いかにもうそをついているようにスティーブと目を合わせない。
 (実は、人質救出作戦がテストであることをスティーブはこの時予め薄々感じていたかも知れないということがわかる。)
・スペンサーの外観
 スペンサーは、片足をひきづりながら杖をつき歩いている。前線で戦っていた軍人あがりの感が出ている。
 (百戦錬磨をうかがわせる。鳥の頭を模した杖など、持ち物に独特のうさんくささを感じる。)
・バイオニックの腕のマニュアル
 840ページ(当然、初版でしょう。その後改訂版とか出ているかも知れないが...。全部読破してマスターするのは大変だなぁ。)
・汗の演出
 砂漠の救出作戦で砂漠を走ったことにより、スティーブは汗をかいているが、実は汗はちゃんと生身の部分である、左側に集中している。これは、リンクしていて4話でも同じ演出があった。
・その他の演出
 まだ第1話なので、バイオニックを表現する為のスローモーション、擬音などの手法は使われていない。

<疑問やエラー>
・最初のテスト機が飛び立つシーン
 飛行機の裏側にマイクスタンドが映っている。思うに誰か演説するシーンでもあったのではないだろうか?
・砂漠の救出作戦のシーン
 パラシュートで降下後、スティーブはリュックを背負って走っているが、現場到着時はリュックを身につけていない。
 (途中で捨てたんでしょうが、いったいどこで捨てたんでしょう?)
・ラストシーン
 スペンサーに対し、「うそつきのイカサマ野郎」と言っているとスペンサーは言っているが、砂漠の人質救出作戦が予めスティーブをテストする為の危険な試みだったことをスティーブは説明会議時に悟っていた可能性がある。それをスペンサーに告白したのではないかとも考えられる。
・故障したバイオニックの腕
 男子救出後の研究所内でスティーブのバイオニックの腕は故障しているが、動かない?(実際は作り物だと思う)。スティーブの左腕の添え方が不自然。
 時代劇などで見られる片腕演出の一部と同じ手法(袖を通さずに腕を固定して大き目の服を着る)か。しかし、このシーンで使う必要があったのか疑問。
 壊れた腕のワイヤー等を見せるためとか、腕が動かないところを強調したかったとかなどが考えられるが、効果は疑問。 

<追加報告-その1>
1976年出版のJoel.H.Cohen著「The Six Million Dollar and the Bionic Woman」によると、まず初回3作はシリーズ化される以前のスポット放送で90分版の仕上げになっている。90分版が3回続いたのはシリーズ化できる作品かどうかをTV局側、製作社側が見るテストの意もあったらしいが、主演のリー・メジャースが「オーエン・マーシャル弁護士事務所」というシリーズでレギュラー出演していた為、第2回、第3回はレギュラー化するにはスケジュールが合わせられなかったということもあったらしい。
また、この第1回については砂漠の救出作戦はアリゾナ砂漠にて撮影されたものであり、当時は非常に暑く(当然だけど)撮影は大変過酷なものであったらしい。尚、上記「疑問やエラー」で提示した「故障したバイオニックの腕」についても言及されており、90分版も含め当初は実際に開発されて一般に使われていた義手をスティーブ役のリー・メジャースの肩にとりつけ、本物の腕は背中にまわして吊るしていたとある。15分ぐらいでもかなり疲れる撮影だったらしい。また、義手の使用方法については、事前にリー・メジャースは開発スタッフから手ほどきを受けており、自分で義手を操っていたことになる。
つまり、リー・メジャースは自分の腕を固定して義手を操るという苦労をわざとやってのけているわけでこのシリーズにかける意気込みが感じられる。効果は疑問とJackは前述したが、効果は疑問にしろリアリティを出す為の苦労の末の効果であることがわかった。このシリーズを成功させようとするリー・メジャースをはじめとするスタッフの意気込みと苦労には改めて敬服する。

<追加報告-その2>
まず、謎のマイクスタンドですが、再度チェックしたところ、スティーブがテスト機に搭乗する際、ウェールズ博士がマイクを使ってスティーブに「気をつけて」と一言応援メッセージを送っていたのを発見しました。

さらに、US版を見たところいくつかのカットシーンが存在しました。気づいたところを挙げてみます。
1. テスト中のコントロールセンターの様子が日本語版より長く映っている
2. スティーブが事故後しばらくたって外を見たいと言って、ジーンがブラインドを開けると若葉が目に入ってくる。それを見たスティーブが何やら生きていてよかったと言ったようなことをジーンに話しているように聞こえる。
3.ジーンとドライブを楽しんだスティーブは森の中でジーンとサンドイッチを食べながらピクニックをしている。
4. 砂漠の人質救出作戦でリュックを捨てているシーンを発見しました。

2,3はストーリー上、わりと貴重なシーンに見えます。


注:エピソード番号、題記などは、講談社「Film Fantastic 6」より引用している。

*無断転載を禁じます。本内容はあくまで個人的研究結果である為、誤りがある場合があります。
*「600万ドルの男」の画像の著作権は、Universal Studios社にあります。また、その他の引用物の著作権は各社、作者にあります。

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