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トップ > バックナンバー > 時代劇 > 慶次郎縁側日記2

第1話 :雪の夜のあと

季節は間もなく節分を迎える頃。皐月が慶次郎の養子・晃之助の元に嫁いでから一年半になりました。お腹も大きくなって、もうすぐおめでたです。
もうすぐ初孫の顔が見られるので、慶次郎もじっとしてなどいられません。皐月のいる八丁堀まで来たのですが、男は何の役にも立ちません。図々しく訪問するほどの度胸もなく、うろうろと歩いていたときに辰吉と行き会います。番屋に何かあった様子。
果たして番屋には、米蔵という若い男がいました。母親のおたきが不審な男に入れ込んでいることに腹を立て、刃物を持って男の長屋前をうろついていたと言うのです。辰吉はその男の娘を呼びに行っているとのこと。慶次郎は生来のお節介から、男の長屋に出向くのですが、そこで会ったのは、忘れようもない男・常蔵でした。
五年前、愛娘の三千代は常蔵に乱暴され、ついに自害してしまいました。慶次郎が一度は殺そうとした男がのうのうと生きていたのです。
しかも辰吉は、このことを知っていながら黙っていた...。慶次郎の怒りは辰吉へも向けられます。
次の日、蝮の吉次に連れられた常蔵の娘・おぶんが慶次郎を尋ねてきます。
どうしようもない父親に疲れ果てたおぶんは慶次郎に「なぜあのとき殺してくれなかったのか」と詰め寄ります。そのとき、皐月がいよいよ産気づいたという知らせが入りました。


第2話:正直者

常蔵たちが巡礼に出てから一年、慶次郎の初孫・八千代は数えで2歳になり、初節句を迎えることになりました。
皐月の父・神山左門も嬉しくて仕方ありません。豪華な雛人形を用意したのですが、なぜか晃之助が断ってきたと悲しそうです。
そればかりではなく、慣例となっている同心への付け届けなども全て断っているとのこと。あまり潔癖になりすぎても家族や出入りの者たちへの小遣いなどが賄えなくなってしまいます。慶次郎は、晃之助に意見をするために出かけるのですが、そこで盗みをした少年を追いかける晃之助に出会いました。
少年の名は直太。ヤクザが開く土場(賭場)にいて負けが込んできた若旦那連中に頼まれて、家からお金などを盗んでくる「あるき」と呼ばれる仕事をしているというのです。なぜか慶次郎を知っているようなそぶりの直太ですが、「正直になんぞ生きたくねぇ!」と、タンカを切ってスネてしまいます。しかし根っからの悪党ではない様子。晃之助はこれが最後だと放免をするのです。

次の日、蝮の吉次から巡礼に出ていた辰吉が戻っていると聞いた慶次郎は、辰吉の長屋を訪ねます。
常蔵は江戸に入らず藤沢におり、常蔵の娘・おぶんは深川の料理屋に住み込みで働いているとのこと。辰吉自身は晃之助の元には戻らないと言います。自分が戻れば、イヤでも常蔵のことを思い出すからだと...。
晃之助もまた同じ考えでした。辰吉を見ると常蔵のことや、あのときの自分を思い出すと言うのです。
「自分のことしかねぇ。おまえの中には他人ってもんがどこにもねぇ!」と怒る慶次郎ですが、皐月から他にも何か理由があるのではないか。と言われたことで思い直し、救われたように笑顔をこぼします。
帰り際に皐月が言った「最近来ない正直者のアサリ売り・直太」のことが気になった慶次郎は、土場に向かいます。果たしてそこで会った土場のあるき・直太は、正直なアサリ売りの直太だったのです。
「なんでそうなっちまったんだ」と問い詰める慶次郎ですが、直太が世の中をすねるキッカケになった出来事に慶次郎自身が絡んでいたことを聞かされ、愕然とします。

数日後の明け方、直太は口封じのため、ヤクザに襲われてしまうのです。


第3話:逢魔ヶ時

ある日の夕暮れ、お登世の店・花ごろもに、お俊と名乗る女が訪れました。
待ち合わせをしているといことで、小半時(約30分)ほど座敷にいたのですが相手は現れず、帰っていきました。
お俊は、座敷にかんざしを忘れていました。どうしたものかと慶次郎に相談に来たお登世ですが、素っ気無く「そのままにしてやんな。」という慶次郎。見かねた佐七に「女心がわかってねぇなぁ」とお説教をされてしまいます。

三日後、お登世は街中でお俊を見つけるのですが、人違いだと言われてしまいます。
不審なものを感じて後をつけるお登世。果たして、店に入ったお俊は、慣れた様子でかんざしを万引きしてしまうのです。
お寺の境内でお登世はお俊を問い詰めますが、お俊は、泥棒をしているときが本当の自分の顔だと言い放ちます。そして、あなたは自分の顔を持っているのか?と、逆にお登世に問うのです。
このお俊こそ辰吉が追っている「逢魔ヶ時の女」という連続万引きの犯人ではないだろうか。なんとか更生してほしいと願うお登世は、一計を案じます。

数日後、山口屋から慶次郎に使いがやってきました。
花ごろもで味試しを行うが、それに慶次郎も出席してほしいというのです。
その他には、山口屋主人・太郎右衛門とお俊、そして飯炊きの佐七にも声がかかったのです。


第4話:佐七の笛

慶次郎が酒問屋山口屋の寮番になってから二年半になる梅雨の頃のお話です。
佐七がいつものように山口屋から月の生活費を受け取っての帰り道、橋のたものでスリに狙われました。危ういところで助けてくれた男は、なんと佐七の若い頃の親友・半次だったのです。
佐七は若い頃笛を作る職人の修業を、半次は笛を奏でる修業をしており、唯一心を許しあえる仲だったのです。
久しぶりの再会で昔話に花が咲く二人、慶次郎の口利きで山口屋に奉公することも決まってささやかなお祝いの席で半次は大事そうに一本の笛を取り出しました。
。思うように行かない世間の荒波のなかで、この笛を心の支えにしていたといいます。
「必ずやりとげてみせる」と神妙な半次。佐七は友の人生の新たな門出を祝って、この笛を修理すると約束するのです。

半月がたちました。半次は山口屋で真面目に働いているようです。佐七も笛の修理に余念がありませんが、蚊帳の外になってしまった慶次郎は、ちょっとヤキモチを焼いていたりします。
そんなとき、蝮の吉次が怪しげな情報をもって来ました。盗んだ酒を安く売って儲けている店があるというのです。しかもその酒の中には山口屋の酒もあり、出回り始めたのが半月前から。半次が働き始めた時期と一致します。
慶次郎は、事の次第を佐七に話しますが、辛かった時代を一緒に過ごした友を疑うことなどできません。俺や半次の昔がわかってたまるか!と言う佐七に、慶次郎は答える言葉もありませんでした。
しかし、そんな佐七を半次が酒場に誘います。「一儲けしないか?」と意味ありげに誘う半次に、佐七は「信じてるよ」と願います。「また笛を吹いてくれ」という佐七を残して逃げるように去っていく半次。しばらくして半次は山口屋から姿を消しました。そして盗み酒を売っていた店の主が刺されたのです。
半次は悪い奴らとグルだったのか。絶望に胸をふさがれた佐七は、それでも慶次郎に言います。「旦那、教えてくれ、人を助けるにはどうしたらいいんだ?」


第5話:親心

八千代が生まれて1年7ヶ月が経ったある日のこと、慶次郎の住む根岸の家に八千代と皐月が遊びにやってきました。孫と遊んでデレデレの慶次郎ですが、辰吉が事件を持って来ました。
おゆうという娘が万引きをしたというのです。おゆうの母親はお稲といい、皐月の乳母・しづの妹にあたります。子供のいたずらが過ぎただけかとも思われたのですが、
今度はおゆうの兄・浜吉とお稲が万引きをしたというのです。
お稲は、今の夫の元には後添えとして嫁いだとのこと。おゆうは自分の子だが、浜吉は先妻の子なので懐いてくれない。と悩んだ末、浜吉の万引きを注意することもできず、あろうことか一緒になってやってしまったといいます。

このまま親子が一緒にいても良くないだろうということで、浜吉は慶次郎と佐七が一時引き取りました。意外にも真面目に佐七の手伝いをする浜吉ですが、どことなく寂しそうです。

一方、晃之助たちも悩んでいました。しづは、皐月が生まれてからずっと乳母として仕えてくれていたが、そのせいで実の妹・お稲の心配事の相談さえ満足にできなかったのではないかと。しばらくして、森口家におふみという新しい女中が入りました。
これでしづも少しは暇ができ、楽をしてもらえると喜ぶ皐月たち。 しづも毎日外出をするようになったのですが...。


第6話:再会

マムシと呼ばれて恐れられている吉次ですが、最近様子がおかしい。と慶次郎に相談をしているのは、吉次の妹です。
いつもズボラな身なりだったのが、不精ヒゲも剃ってこざっぱりしている。数日前に女が訪ねてきて以来とのこと。
この女というのは、深川越中島の岡場所にいるお蝶。お上の手入れ(警動)があったときに逃げ遅れたのを吉次が助けたのがなれそめだそうです。
その日もお蝶を尋ねた吉次ですが、何気なく窓ごしに見た女に驚きます。

女の名前は、おろく。元の名前はおみつといい、吉次とは一緒に暮らしていたことがあるのですが、現在はここ越中島の岡場所にある桔梗屋の主人と結婚しているそうです。
主人は若い愛人を作り、おろくは女中同然の暮らしをしていたのですが、おろくも若い男を作っているとのこと。あまりの変わりように言葉もない吉次でした。

一方花ごろもでは、お登世に吉次の過去をポツポツと語る慶次郎の姿がありました。
吉次には女房がいた。とても大事にしていた女房だった。しかし、十四年前に不倫が原因の刃傷事件があった。犯人を追った吉次が探り当てた不倫の女は吉次の妻だった。しかも女は相手の男と逃げてしまった...。というのです。
それ以来、吉次は「人の底を知りたくなった」といいます。「人ってぇのは、いってぇどこまで悪いのか?」

吉次は、おろくの変わりようが理解できませんでした。おみつはそうじゃなかった。
昔に戻りたいのだろうか?そしてつぶやきます
「戻りてぇと言わねぇなら、言わせるまでだ」。


第7話:あたりくじ

皆がなぜかあわただしく走り回る年の瀬の頃、根岸の里では佐七がやけに富くじを非難していました。「なんでムキになるのかわからねぇ」などと怒っているのですが、実は自分もくじを買ったのに、抽選の富つきを見に行く勇気がないからだったのです。
結局慶次郎が佐七のくじを持って富つきを見に出かけたのですが、そのお寺の境内で行き倒れに出会います。しかも花ごろもの女中・お秋の知り合いらしいのです。

容態を観た医者の玄庵先生は、心臓が弱っているのに加え、いやな咳をするのが気になると言います。かなり悪い病気にかかっているようです。
小野崎源三郎という名のこの武士は、さる大名の家臣だったが、何かの事情で追われ、江戸に出て暮らしているとのこと。方々の富つきの会場に行っているようで、お秋とは半年ほど前に知り合ったらしいというのです。
富くじにのめり込んでいる源三郎とお秋に、お登世は心配を隠せません。夜、源三郎のために店の卵を盗もうとしたお秋ですが、お登世に咎められても悪びれる様子もなく、あの人といると楽しい。と言います。
そして、昔の花ごろもは楽しかったのに。と言われたお登世は返す言葉もありませんでした。

お秋は花ごろもを飛び出し、源三郎の住む長屋に行ってしまいました。
そして今年最後の富くじ、百両もの大金が当たるそのくじを買ってきた二人は、当たったらどうしようかと、夢のようなことを楽しそうに語り合うのでした。

数日後、慶次郎の元に一人の老武士が尋ねてきました。なんと、源三郎の仕えていた大名の家臣で、源三郎を探しているというのです...。


第8話:昔の女

まだ白くもやの残る早朝に、吉次が慶次郎を訪ねてきました。
浅草の宿の主人が殺され、向かいの魚屋が宿から走り去る男女を目撃した。こともあろうに男は辰吉だというのです。

辰吉のところによく出入りしているおぶんなら何か知っているかもしれない。慶次郎がおぶんに問いただすと、どうも最近、女がいたらしいことがわかりました。
おもんという名の女で、昔、辰吉がお手先になる前、辰吉の弟分の妹だったというのです。喧嘩で死んだその弟分の代わりに面倒を見ていたのですが、辰吉はおたかに出会い、おもんは身を引いた経緯があったといいます。
おもんは、それからあちらこちらをめぐって、千助という油売りの男と所帯を持ったのですが、毎日暴力をふるわれるため耐えかねて駆け込み寺に逃げるため、辰吉を頼ってきたらしいのです。

この時代は、女性のほうから離縁をすることができませんでした。唯一の道は、縁切り寺と呼ばれる鎌倉の東慶寺に駆け込み、長い寺づとめをすることで離縁ができるという方法だけなのです。
殺しの下手人と疑われても、辰吉は東慶寺におもんを連れて行くことが先決だと思ったのでしょう。しかも、千助もおもんを狙っているに違いありません。
慶次郎はおぶんと共に辰吉たちを追って旅立ちます。

一方、川崎の近くまで来た辰吉とおもん、辰吉は「お前を必ず鎌倉まで連れて行く。誰にも殺させねぇ」と誓います。
二十年前、辰吉の女房・おたかを守りきれずに亡くした思いが今の辰吉を動かしているのでしょう。しかし、ふたりを狙う千助が追いついてきました。さらに辰吉を宿の主人殺しの下手人と思い、追いかけてくる役人達の影が...。

おもんは無事に逃れることができるのでしょうか?そして慶次郎たちは、追いつくことが出来るのでしょうか?


第9話:花の下にて

江戸では桜がほころび始めた頃、達吉の住む長屋を訪ねた慶次郎は、おぶんと出会います。だがおぶんは小走りに逃げてしまうのです。辰吉がいうには、近頃、誰が来ても逃げるようになったとこぼします。常蔵のことで、かなり自分を責めているのではないかと心配する皐月と慶次郎です。

そんなある日、晃之助が慶次郎の家を訪れます。やっかいな探索をしている。と悩んでいる様子。殺しの一件なのですが、父娘ふたり暮らしの娘・おはなが殺され、その下手人と思われる佐三郎という男は、おはなと遊びで付き合っていたらしく、別れ話のもつれからの犯行ではないかと思われるのです。しかも、おはなの父・万兵衛が佐三郎に復讐をしようと付け狙っているという...、昔の自分たちに重なって見える万兵衛に、「殺そうと思うな」とさとす晃之助なのですが、そういう自分が腑に落ちない。と悩みを打ち明けるのです。
慶次郎も、同じ心境でした。本来なら晃之助に助言をしなくてはならないのですが、「殺してはならんと己を封じる、と、ますます憎しみが増す...。」と苦しい本音を漏らします。

数日後、吉次が慶次郎を訪ねてきました。三日ほど前、万兵衛が佐三郎を刺してしまったというのです。晃之助は、落ち込んでいました。「万兵衛を諌めながら、反対のことを考えていた。」そして取り上げた刃物を万兵衛に返してしまいました。その刃物で刺してしまったのです。
結局、殺人をそそのかしてしまったのだ。と泣き崩れる晃之助に、慶次郎は何も言えませんでした。

一方、おぶんを気にかけていた皐月は、辰吉の長屋を訪ねます。
女同士の安心感からか、おぶんは自分を責めながらも「もっと幸せになりたい」と本音を言います。
皐月は「私は、あなたがいて、幸せになれた」「幸せになりたいという自分を決して恥じてはいけません」と、おぶんを励ますのです。

夜、花ごろもでは、慶次郎がお登世に苦しさを語っていました。
「あの時、常蔵を斬っていたら..」と悔やむ慶次郎に「男の方は自分を責めるのが好きですね」と笑います。そして、いま慶次郎の心は「自分の一番苦しいところから目をそむけているだけだ」と叱るのでした。

翌日、慶次郎は辰吉を訪ね、藤沢の常蔵に会いに行く。一緒に行って見届けて欲しいと頼むのです。
街道を黙々と歩く二人、慶次郎と常蔵の長い因縁は、どのような決着を迎えるのでしょうか?


第10話:祝言

藤沢で常蔵が逝ってから数ヶ月、季節は夏・七夕の頃、慶次郎は辰吉の長屋を訪ねます。おぶんが辰吉とふざけ合っているのを見て、明るくなったおぶんに心和む慶次郎でした。
そろそろ二人を夫婦ににても良いのかもしれないと、さりげなく晃之助にきりだした皐月なのですが、晃之助の心には、まだわだかまりが残っているようで、首を縦にはふりません。
晃之助の本心を確かめるために、慶次郎は森口家を訪れます。
そこで晃之助は自分の苦しみを吐露するのです。
「父上は常蔵に引導を渡したのだろうが、自分はまだ割りきれない。」
「これからのお役目をどう生きたら良いかわからない。」
慶次郎は、「俺にはもうお役目はない。うらやましいよ」と言い残して森口家を去ってしまいます。自分の心のけじめは、結局自分でつけるしかないというように...。

その足で花ごろもを訪れる慶次郎ですが、そこでお登世の語る夢を聞き、自分には無くなってしまったその前向きな心に嫉妬してしまいます。
結局泥酔して根岸の里に帰ってきた慶次郎は、埋めることのできない寂しさを抱えて眠ってしまいました。

何日か後の夜、迷いの中にいる晃之助は、屋台の蕎麦屋で吉次に出会います。お登世から矢作の一件で探索を請け負って動いていた吉次は、男と女のやりきれない本心を愚痴るのでした。
そして、本当の悪ってやつは、自分の心の中にあるんじゃないだろうか。どうしようもなければ、抱えていくしかない。と晃之助に言います。
その言葉で晃之助の中にある何物かが吹っ切れたのでしょうか。
晃之助は辰吉の長屋を訪ねます。
そして、「自分はまだ完全に納得したわけではない。しかし、俺を待つな。お前たちはお前たちを生きろ!」と二人の祝言を認めたのでした。

慶次郎の娘・三千代の悲しい死で始まった物語ですが、それをきっかけにして、様々な人達が悩み、苦しみながらそれぞれの幸せを必死に探していく。そして、ついにおぶんも信じられないような幸せを得たのです。


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