東京吉祥寺のマンションで男が首を絞められて殺されていました。
　十津川たち捜査一課が現場に赴き、被害者の身元を確認したところ、絵高インターナショナルの経理課長・畑野宏であること、そして携帯電話には「明日、スーパーおおぞら5号でいきます」という内容のメールが残されていました。

同じ頃、北海道の帯広駅では、メールの主・古谷愛美がスーパーおおぞら5号に乗車しました。前から乗車していた中村佑樹から「足がつかないヤツだから」というスマートホンを受け取り、大きなリュックに仕舞い込む愛美ですが、そのリュックには大量の札束が入っていたのです。
　そして、釧路に到着した列車に愛美の姿はなく、佑樹の死体だけが残されていました。

東京と帯広で起こった殺人事件には関連がありそうです。北海道警から東京の捜査一課にも捜査協力要請が入り、松山刑事が釧路に飛びました。
　一方、十津川警部と亀井刑事は、畑野と愛美が勤務していた絵高インターナショナルを探りに行きます。
　先代の父から事業を引き継いだという社長の絵高陽子と弟の副社長・絵高良は捜査への協力を約束してくれ、詳細を知っているとのことで人事部長の林雅彦を紹介されました。
　その林が十津川たちに、畑野が会社の横領事件に関わっているかもしれないと言い出したのです。金額はおおよそ２億円。さらに愛美もそれに関わっている可能性があると……
　そして愛美の上司である企画部長の日野佳代子は横領事件について何か隠しているそぶりがあるなど、十津川と亀井は「妙な雰囲気の会社だね」と、あまり良くない印象を持った様子です。

北海道の松山刑事は、池田駅で愛美が下車したことを突き止め、血痕のついた切符を発見します。指紋が愛美と一致すれば、殺人の容疑も深くなってしまうのです。
　その頃、愛美は帯広の北、上士幌町にある糠平湖に来ていました。そこでスマートホンに突然の着信が！しかも非通知です。電話は男の声で「持っている１億円を渡したら警察には黙っていますよ」と告げてきました。

東京の企業で起きた殺人事件と横領疑惑。そして北海道の特急列車内殺人事件。ふたつの事件の鍵を握っている古谷愛美は、なぜ逃亡を続けているのでしょうか？そして愛美に近づく謎の電話の主の正体は？
　春が色づき、冬を過ごした雁が北へ帰っていく頃。東京と北海道で繰り広げられるミステリーに十津川警部が率いる捜査一課が敢然と挑んでいきます。
　道東の風景はもちろん、北海道の大地を疾走するスーパーおおぞらの美しい姿も鉄道ファンにはたまりません。
　さらに今回は後半にカーチェイスやアクションシーンも繰り広げられますから、全編見所満載で見逃せませんよ。好評のトラベルミステリ最新作をご家族揃ってぜひお楽しみください。