協同組合会計の特異点

 協同組合は、出資者たる組合員をもって構成され、組合そのものは営利を目的とせず、組合員の経済活動を助成することを目的としています。
 この協同組合はその根拠法に基づき、いくつかの種類に分かれます。法人税法上の法人の区分としては、協同組合はおおむね法人税法別表第3「協同組合等」のグループに属します。
 その法人税法別表第3には、農業協同組合・漁業協同組合・消費生活協同組合・中小企業等協同組合・商店街振興組合等合せて37種類の組合が掲記されています。
 出資商工組合、及び出資商工組合連合会は「協同組合等」に属しますが、非出資商工組合及び非出資商工組合連合会は「公益法人」に属し、収益事業を除き非課税の取扱いをうけます。
 一方、企業組合及び協業組合は、事業協同組合・商工組合等と同様に、根拠法上は中小企業団体に属しますが、営業の形態が組合員との取引を基礎とせず、会社に類似するところから、「普通法人」のグループとして取扱われます。
 ここでは、もっぱら法人税法別表第3「協同組合等」に属する組合の会計実務について検討を進めることにします。
 これら「協同組合等」に属する組合は、税務上普通法人に見られない特別な取扱いがありますが、それらは主として協同組合の性格に由来するものです。
 それでは協同組合会計実務における主要なポイントを列挙してみます。

(1)事業別区分損益計算
 協同組合では、組合員の経済活動を助成するためにいくつかの事業が行われますが、それらの事業遂行上の費用負担は、その事業から利益を受ける組合員が、事業を利用した分量に応じて負担するという応益負担の原則によることとしています。
 したがって、数種の事業を行う組合の損益計算は、原則として事業別損益計算を行い、それぞれの事業から生ずる損益を明らかにしなければなりません。そしてこの計算の結果は、通常総会に決算書類として提出され、組合における費用負担の合理性について組合員の承認を求めるとともに、次年度の収支予算立案の参考資料に供されます。

(2)利用分量配当
 
事業別損益計算の結果、共同購買事業・共同金融事業等の経済事業に相当額の事業利益が計上された場合には、取扱手数料の割戻しに当る利用分量配当が行われます。
 法人税法はこの協同組合の処理を課税所得の計算に織り込んで、剰余金処分で行われる利用分量配当であっても、これを配当対象年度の損金に算入することを認めています。
 決算処理に当たっては、配当である以上剰余金処分案に計上することとなりますが、税務上はこれを申告調整によって損金に算入します。
 この配当は、出資配当とは異なり、組合と組合員との取引高、すなわち利用分量に応ずる配当であり、さらに配当であるからには組合員との取引によって生じた利益の範囲における配分でなければなりません。
 したがって、利用分量配当を行うにはまず事業別損益計算書によって、それぞれの事業の事業利益が算定されていることが条件とされ、この事業利益のうちから員外取引分を除いた組合と組合員の取引に基づく利益がその対象となり、これをその取引高に応じて配分するのです。

(3)仮受賦課金
 
協同組合の行う重要な事業活動の一つに、非経済事業である教育情報事業があります。この事業の費用は、組合員が等しく受益する事業であることから、組合員全員に賦課される賦課金収入をもってまかなわれます。
 予算会計の上に立つ組合会計においては、この賦課金の年度収入予定額は、当然に年度支出予定額に見合うものでなければなりません。
 ところが、その年度において予定していた教育情報事業がその年度内に行えず、その事業に対する予算額に余剰を生じた場合、その事業を翌年度に繰越して実施することが確実であれば、その予算額を仮受賦課金として翌年度に繰越す処理を行います。この処理は税務上においても認容され、適正に処理された仮受賦課金は課税をうけないこととなります。

(4)組合員持分
 組合法上、協同組合の組合員となるには、組合に対し1口以上の出資を行うことが条件とされ、組合の財産は出資口数に応じて組合員に帰属します。
 この組合員が組合に対して有する経済的な権利を組合員持分と呼びますが、組合法では、この持分は組合員の拠出した出資金に止まらず、組合正味財産全体に及ぶものとしています。そして組合員が組合を脱退するに当たっては、原則としてこの持分の全額が払戻されることとなります。
 反対に新規加入者がある場合には、出資金のほかに、出資金を上廻る組合正味財産の部分に相当する加入金を徴収し、在来組合員と新規加入組合員の間の組合員持分を調整することとしています。
 これら持分額の計算に関して、組合正味財産をいかに評価するのか、脱退組合員の持分をいかに計算し、どのように払戻せばよいのか、新規加入組合員の加入金は誰が決定し、いかに受け入れ処理をするのか等の問題について、その基本的な取扱いはそれぞれの組合の定款に規定されています。
 組合実務に当たっては、この定款規定にしたがって組合員持分にかかる明確な計算を行い、脱退組合員と在籍組合員、或いは新規加入組合員と在籍組合員、それぞれの間に損得を生じせしめない組合員の財産権を尊重した会計処理が要求されます。


       


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